「蘭奢待」を拝観
とある平日の昼下がり、上野の東京国立博物館へ・・・建物の外まで凄い行列ができています。
平日だというのに、入館まで4~50分を要しました。
人々のお目当ては、令和元年11月24日まで開催されている御即位記念特別展「正倉院の世界 ―皇室がまもり伝えた美―」。
中でも、私の一番のターゲットは・・・
三月廿七日、信長、奈良の多門に至りて御出で。(略)
三月廿八日、辰の刻、御蔵(正倉院)開き候ひ訖んぬ。彼の名香(蘭奢待)、長さ六尺の長持に納まりこれあり。則ち、多門(多聞山城)へ持参され、御成りの間、舞台において御目に懸け、本法に任せ、一寸八分切り捕らる。
(信長公記 巻七「蘭奢待切り捕らるゝの事」より。( )内注釈:管理人)
天正2年(1574)3月、織田信長が朝廷へ奏聞の上、奈良の多聞山城で東大寺正倉院から運ばせて切り取ったと云う蘭奢待(黄熟香)。
正倉院のある奈良でも滅多に公開されることのないその蘭奢待が、本特別展で展示されることを知り、もう数ヶ月も前から待ち詫びていました。
ご覧のような盛況ぶりで館内も人でごった返しており、とても展示品の一つ一つをじっくりと観て回る余裕はありませんでした。その殆どは、来館者たちの肩越しに覗き見るのがやっと・・・。
しかし、蘭奢待だけは悔いを残さぬよう、スペースが空くのを待ってじっくりと拝観して参りました。
まず何よりも驚いたのが、その大きさ。
長さは大人が両手を左右に広げたほどもあったでしょうか。
太田牛一も先に引用した「信長公記」の中で「六尺の長持に納めて運んだ」と書いており、6尺=約180㎝なのでサイズ感はピタリと一致します。
同じく展示されていた黄熟香元禄期収納箱(徳川綱吉が元禄6年に作らせたもの)もやはり、同じくらいの大きさだったように思います。
そして、織田信長が切り取らせた部分。
展示ケース越しの目測で5~6㎝四方くらいかな~と感じたので、やはり牛一が記す「一寸八分」(5㎝強)と見事に一致します。
折角の機会に、貴重な宝物の数々をじっくりと堪能することが叶わなかったのは残念ですが、念願だった蘭奢待を拝観できただけでも大満足。
次に会えるのは何年後になるのかなぁ・・・。
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